よるの数だけ 守ってもらった


少し離れて、もう一度。


こうするのははじめてじゃなくて、この前の体育の時間の図書室で、その前の体育の時間では第二校舎へ続く渡り廊下で、した。その前は何処だったっけ。

決まって如月初雪は無防備に目蓋を下し眠ったふりをするから、良いかなって。このひととしかキスをしたことがないわけでもないし。


べつに、恋ではない。

むしろあまりこのひとのことは得意じゃない。



「……くだらない」



綺麗な寝たふりから背を向ける。

その先で青空が不快なほど広がっていて、避けるように掛け布団を頭で被った。


脳裏にこびりついた肩なしの鳥の輪郭をなぞって、1時間が終わるのを必死に堪えた。



「鳥羽さん、体育の時間終わったよ」


身体を揺すぶられ、はっとした。

目を開けると窓からの光に照らされた白髪がわたしに降りかかってきて思わず眉を顰める。


「終わる前に起こしてよ。着替えとかあるんだから」

「どうせ休むのに着替えまではするところがいじらしいよね」


まるで文句を言うような口調で苛ついた。

べつに、関係ないでしょう。



「ねえ着替えさせて」


持ってきていた体操着袋を顎で指す。


「遅刻するからはやく」


如月初雪はまた文句を言いたそうな目でこちらを見たけど、見つめ返すと深くため息を吐いて、白いTシャツに手をかけた。


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