よるの数だけ 守ってもらった
ミナとは中学と高校が同じだけど、クラスが一緒になったのは今年がはじめて。
仲は良い。ミナの明るい空気は、楽な時も多い。
「そらはどうなの?満実先輩が帰ってきてから会ってるんでしょ?ヨリ戻りそ?」
だけどべつに、深い話はしない。
「んー、会ってるけど、どうだろ」
あからさまに濁すと、ミナは空気を読んだのか、別の話題にすり替えてきた。
「てか、商店街のポスター、そらのイラスト変わってたよ!前の跳ぶ寸前、みたいなのから跳んでるのになってた!」
──── 誰なんだよ、断りもなく、毎回。
「陸部もーすぐ大会なんでしょ。そらはまだ部活出ないの?」
跳ぶ寸前、跳んだあと、駆ける姿。
街に貼られた高校の宣伝ポスター、あるいは大会を知らせるポスターは、またわたしの知らないうちにわたしの過去のシーンを切り取ったものに変わっているらしい。
「事故の影響、たいしたことないって言ってたよね」
もっと空気読めよ。
「んー……でもなんか、飽きちゃったんだよねえ。ははっ」
仕方ないから代わりにわたしが空気を読んで、笑ってあげる。
「飽きたとか!じゃあうちのことたくさん構ってね」
「もう存分に構ってるじゃんね」
「もっとだよ〜。そら、中学の時からずっと高跳びバカだったんだもん」
「バカってなにー」
過去に戻れないなら何もかも滅びればいいのにね。こういうの、面倒くさいから。