よるの数だけ 守ってもらった
今日は絶対、
絶対、やろう。
「鳥羽さん」
教室に入ると如月初雪が躊躇いがちに話しかけてきた。人前でめずらしいな、とぼんやり思う。
「何?」
苛々していたからか、つい棘のある声を出してしまった。単なる八つ当たりだけれど、隣のミナは勘違いをして少し笑った。
一方八つ当たりされ、他人には馬鹿にされた如月初雪は何も気に留めた様子なく「今日前の人が休みだから一緒に日直だって」と返事をしてきた。
はやく帰ろうと思っていたのに、ついてないなあ。
「そうなんだ。教えてくれてありがとうね」
「…うん。黒板消しは僕がやるよ」
「そ、ありがとう。あと必要なのは実験の準備と帰りの日誌くらいだよね」
「うん。よろしく」
ひとりごとみたいな喋りかたをする。口の中で言葉が泳いじゃって混ざって聞こえにくい。
そんなんだから、へんな噂の的になるんだ。
べつにどうだっていいけれど。
「気をつけてね、そら」
ミナが眉を寄せ、小さく、だけど聞こえても良いような声でつぶやいた。
どうやら鳥の事件は、本当にこのひとがやったことになっているらしい。くだらない。
「うん、ありがとう」
如月初雪のこと、さね先輩のこと、わたしのこと、何も知らないのに、本当にくだらない。
でも全部どうでもいい。