幸せなひとときをきみに〜隠れ御曹司の不器用な溺愛〜
「僕は天雲さんの名前を書きました。天雲さんが他の人の名前を書いてなくてよかった。よかったら、LINEの交換をお願いしてもいいですか?」

「え?」

「ルール違反だとは思うんですが」

照れ臭そうに笑う中島くんは普通に好青年だ。
でも、どうして会場で話をかけてこなかったんだろう?

「ルール違反だよね」そう言って微笑むと「ですよね〜」と悪びれた感じがない。
むしろ、少しあざとさが見えてきた。

「ところで、さっきの5分間の顔合わせの時って私に気づいた?」

「いえ、まさかここに天雲さんがいるなんて思わなかったから。まぁ天雲さんなんて珍しい名前はそんなに居ないとは思ったんですが、普段とは随分と雰囲気の違う服装で迷ったというか。会社ではほとんど接点が無いし、インテリア話に食いついた時はやっぱりそうだって思ったけど時間ぎれで」

あああ、そういえばインテリアの話で盛り上がった人が居た。

清太郎と知り合ったのは、彼が手がけたカフェの照明を私が担当したから。


パーティーションや植物で個別空間を作り全体的にウッディな感じが秘密基地よのうなカフェだった。
おしゃれな秘密基地に合う照明を探すのは大変だったが清太郎の求めるものを提示した時の彼の笑顔が凄く素敵でまた会いたいと思っていたら、彼の方から誘ってくれてそのまま付き合う事になった。
ぶっきらぼうで言葉が足りないけどあの頃は私も足りない言葉を自分から補っていった。

そういうのをしなくなったのは私で清太郎はずっと変わっていない。



LINEのメッセージを見る。

パーティどう?

新しい恋は始まりそう?

変なのに捕まってない?

報告待ってる!


祥子からのLINEが凄い。

「子供じゃ無いんだから」



ふと清太郎を見ると不機嫌そうな表情をしている。


「教えるわけないでしょ、祥子から心配するメッセージが大量」

明らかにホッとした表情をしたかと思うと、私を真っ直ぐに見つめていた。
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