幸せなひとときをきみに〜隠れ御曹司の不器用な溺愛〜
帰り道、ドラックストアに寄ってダンボールを貰った。

家に帰ると畳まれたダンボールを組み立てる。

大きめの紙袋も口を広げて立て、さらにゴミ袋も広げてならべると

「よし!」
と、掛け声を掛けてクローゼットを開ける。

彼に返すもの、捨てるもの、紙袋には彼から貰ったブランド品を入れる。
彼のものはそんなに多くない。
彼がこの部屋に来たのは付き合い始めてから3年くらい。
そのあとは使えない鍵を渡されて、彼からの連絡を受けて会うくらい。

それでもよかった。

連絡をくれるということは少しでも私の存在があの人の心にあると思ったから。
時々外食チェーンのレストランに行ったり定食屋に行ったりするのも彼とならうれしかったし楽しかった。

一年前から外食することもなくなって、誕生日もクリスマスも彼の家で過ごして抱かれる。会話も少なくなって彼がなにを考えているか分からなくなった。
抱かれているときは、私だけを見ているから安心できた、でも夜が明けると私は置いてけぼりだった。

でも、よく考えたら、私が彼にとって特に重要じゃないような気がして、それでも前のようになれるんじゃないかと思った。

五年は長い

結婚する人は出会ってからそれほどの時間を要しなくても結婚するけど、結婚のタイミングを逃した場合はずるずると終焉に向かっていく気がする。

男は働き盛りで脂がのって行くが女は婚期をのがして枯れて行く、そうなったら仕事に生きるか、一人を楽しむか・・・

私は、清太郎の家族になりたかった。
でも、お互いの向いている方向が違うのなら


なんにもならない


もう限界だった。


彼にもらったものは質屋にでも持って行っておいしいものを食べよう。

彼の痕跡をダンボールにつめて蓋をする。
宅配の伝票に彼の住所と名前を書く。

彼の名前を書くのはコレでお終い。

ここに来なくなってからもいつ使うか分からないから時々洗濯して柔軟剤を使った下着や服。
もう着ることなんか無かったのに、
自分って結構甲斐甲斐しいじゃん。

馬鹿みたい


ゴミ袋には私が彼の為に揃えた日用品を入れる。

気がついたら日付けが変わっていた。

ふと見るとスマホにLINEのお知らせが来ていた。

彼からだ

『どういう意味?』

の一文字だけ


そう

そんな程度


『そういう意味』

とだけ返して電源を落とした。


少しでも寝ておこう。


シャワーを浴びていると涙が出てきた。


自分から言い出しておいて結構ダメージを受けてる。
しがみついておけば良かった?
ミジメなエンディングを迎えたとしても、セフレのまま繋がっていれば良かった?


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