あの春を、もう一度。
“最後”の言葉が先輩の口から発せられると、やけに現実味が増す。

やっぱり、これで終わりなんだよね。

正直なところ、先輩がいなくなるなんて悪い夢なんじゃないかという気がしている。

ふと目が覚めたら、隣でまた先輩がふざけていて、屈託ない笑顔でいて欲しいと願っている自分がいる。

黙りこくった私の顔を、先輩が上半身を起こして覗き込む。

それから、によによと頰を緩ませる。

「えーなになに、もしかして先輩が卒業しちゃうのが寂しかったりしちゃう?ホント可愛い後輩ちゃんだなっ」
「バカ言わないで下さい!先輩卒業させるの大っっっ変だったんですよ!」

思わぬ図星に、真っ赤になって反論する。

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