あの春を、もう一度。
「テストは赤点だらけだし遅刻魔だし、居眠り常習犯だしで、結構本気で留年寸前だったの分かってます?」
「ホントどうかしてるよな」
「他人事みたいにっ…」

のんきにあくびなんかする先輩の肩めがけて、いつものように1発軽いパンチを繰り出す。

先輩は慣れた動作で、片手でそれを受け止める。

「ま、実際、卒業できたのお前のおかげだよなー。留年かかった最後のテストは勉強見てくれたから、平均点超えだったし。3年の学習内容網羅してるとか軽くホラーだわ」

確かに頭の回転が速い自覚はあるけども。それにしても先輩は勉強しなさすぎる。オール1の通知表とか、生まれて初めて見たもん。

先輩の留年を防ぐのに、どれほどの時間と努力を要したか…。

「むしろ、卒業してくれてせいせいしてますよ」

今となっては、あと1年一緒に居られるのなら留年なんて大歓迎なのだけど。

「…そーいうセリフって大抵、本音とあべこべなんだけどなぁ」
「か、からかわないでくださいっ」

< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop