あの春を、もう一度。
学校を後にした私と先輩は、並んで桜の並木道を進む。
優雅に回転しながら空を舞う花びらが目の前を通過する。
生温かい風が頰や髪を撫でていく。
「綺麗だなー」
先輩は風に乗る花びらを掴もうと、伸ばした手をしきりにグーパーしている。
途切れることなく降り注ぐ桜は、まるでピンクの雨のよう。
少しでも時間を繋ぎ止めたくて、私はおもむろに口を開く。
「先輩は、明日からもっと満開の桜を見れるんじゃないんですか?」
先輩は少し驚いたように目を見開く。それから眩しそうに、どこか遠くを見つめて頷く。
「そうだな。いっぱい写真撮ってくるよ」
先輩は、明日でこの町を去る。
“プロのカメラマンになる”、その夢を追いかけるために。
なんでも、叔父さんが業界では名の知られたカメラマンらしい。
先輩はその姿に憧れて写真を撮るようになったと、私が入部したての頃に教えてくれた。
その叔父さんの、日本全国津々浦々の写真撮影の旅に先輩は同行するのだ。
「頑張ってくださいね。私、先輩の撮る写真、すごく綺麗で大好きですから」
いつも空回りして誤魔化してばっかだけど、このことだけは、素直に伝えてきた。
優雅に回転しながら空を舞う花びらが目の前を通過する。
生温かい風が頰や髪を撫でていく。
「綺麗だなー」
先輩は風に乗る花びらを掴もうと、伸ばした手をしきりにグーパーしている。
途切れることなく降り注ぐ桜は、まるでピンクの雨のよう。
少しでも時間を繋ぎ止めたくて、私はおもむろに口を開く。
「先輩は、明日からもっと満開の桜を見れるんじゃないんですか?」
先輩は少し驚いたように目を見開く。それから眩しそうに、どこか遠くを見つめて頷く。
「そうだな。いっぱい写真撮ってくるよ」
先輩は、明日でこの町を去る。
“プロのカメラマンになる”、その夢を追いかけるために。
なんでも、叔父さんが業界では名の知られたカメラマンらしい。
先輩はその姿に憧れて写真を撮るようになったと、私が入部したての頃に教えてくれた。
その叔父さんの、日本全国津々浦々の写真撮影の旅に先輩は同行するのだ。
「頑張ってくださいね。私、先輩の撮る写真、すごく綺麗で大好きですから」
いつも空回りして誤魔化してばっかだけど、このことだけは、素直に伝えてきた。