あの春を、もう一度。
「春野のおかげだよ」

楽しげな響きを含んだ少し低い声が、ゆっくりと耳に届く。

普段のそそっかしさを感じさせない、落ち着いた雰囲気に胸がとくんと鳴る。

「な、なにが」
「ん〜、なんだろなぁ」

言葉足らずも休み休みにしてくださいよ…。

ため息をつく私の先に歩み出た先輩は、背中を向けて、考え込むように顎に手を当てる。

少し前に進んでから振り返る。

「ま、近いうちに分かるよ」

え…?

「それだけですかっ⁉︎」
「うん」

なんのヒントにもなってないんですが…。

唖然とする私に構わず、先輩はグングン歩いていく。そんな背中を小走りで追いかける。

ホント、頭のてっぺんから爪先まで自由人。

やっと横並びになったと思ったら、先輩は突然足を止める。

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