俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 カリッドにとって、彼女の初めてを共有できるということは、この上なく嬉しいこと。

「モニカ」
 カリッドは優しく彼女の名を呼ぶ。
「髪、結んでやろう」

 モニカはカリッドが何を言っているのか、意味がわからなかった。なぜにこのタイミングで髪なのか、と。

「え、髪ですか?」

「ああ、せっかく初めて芝居を観に行くのなら、少し、お洒落をしたらどうだ? その、あ、あれだ。俺とのデートだしな」

「ってそこで、団長がその、私の髪を?」

「ああ、よく妹の髪をいじっていたからな。こう見えても得意だ」

< 102 / 177 >

この作品をシェア

pagetop