俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「一体、どのような特別報酬でしょうか」
 つい、モニカは腰を浮かしそうになったのは、その特別報酬に惹かれたためだ。特別報酬というものは、普通のお給金ではない。現物支給の場合もある。

「そうだな。モニカの場合は、あの伝説の魔導具師マルセルの魔導弓(まどうきゅう)とかはどうだ?」

「え、伝説の魔導弓ですか? そのようなものを団長はお持ちなのですか」

「あ、ああ、まあ、な。その、伝手があってだな」

 ゴクリとモニカは喉を鳴らした。魔導弓、それは放った矢が自動的に射手に戻ってくるという、弓を射る者にとっては魅力的な弓だ。

「わかりました。ぜひとも団長の恋人役をやらせてください」
 モニカは特別報酬の魔導弓に釣られて、つい、そう答えてしまった。
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