俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

　モニカは目をしっかりと見開いて、カリッドを見つめている。カリッドも負けずにモニカを見ている。

「あの、リディ。その、お尻に何か当たってるのですが」
　それは朝も感じた硬い物。

「ああ、自然現象だ。だが、あまり動かないでくれ。そのままで」

「え、と。リディはその。私とそういったことをすることは嫌ではないのですか？　いくら恋人の振りと言っても」

　そう。恋人の振りでこのような口づけはやりすぎではないのか、とモニカは思っていた。だから、カリッドの本心を聞き出そうという魂胆もある。それは朝耳にしてしまったカリッドの「可愛い」という言葉。それが彼女の心のどこかに引っかかっていて、それで今、そう尋ねてしまったということだ。

　カリッドが何か言葉を口にしようとしたところ、芝居が始まる鐘の音が響いた。