俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

2.

 芝居が始まれば、モニカもその世界に引き込まれてしまう。今、自分がどこに座っているのかということを忘れてしまうほど。ときどきオペラグラスで役者の表情を見たり、そしてそれを外して舞台の全体を眺めたり、と、夢中になってその世界を堪能していた。
 盛大な拍手が沸き起こり、舞台は幕を閉じる。

「はぁ……すごかったです……」
 モニカは感嘆の声を漏らす。

「そうか。楽しんでもらえたのなら、誘った甲斐があったというものだな」
 なぜかカリッドは笑いをこらえるような表情でそう言った。

「なんか、笑ってません?」
 モニカがじーっとカリッドを見つめた。

「いや、そう、か?」
 カリッドはそれを誤魔化すように、口元を手で押さえている。

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