俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 そして、こういうときに限って優秀な使用人であるイアンはいない。これは、試練なのだろうか。

「……思って、いる」
 カリッドは嘘をつきたくなかった。自分の気持ちを隠したくなかった。もしかしたら、という期待も込めている。

 モニカは思わず掴んでいた手を離してしまった。だが、今度は逆にカリッドにその腕を掴まれる。

「俺は、君のことを可愛いと思っているし、君と、もっとこういうことをしたいと思っている」

 そこでカリッドは、己の唇でモニカのそれを塞いだ。もう、自分の気持ちをぶつけたのだから遠慮はしない。舌をいれ、舐り、絡め、己の唾液を注ぎ込む。朝よりも先ほどよりも長くて濃厚な口づけを交わし、カリッドはそっと身を引いた。
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