俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 カリッドと視線を合わせたモニカは急に恥ずかしくなったのか、彼の胸元に顔を埋める。

「モ、モニカ……、どうか、したのか」
 カリッドはそのモニカの態度に不安になった。もしかして、嫌われてしまったのではないか、と。

「……嬉しい、です……」
 消え入るような声で聞こえてきたのはその言葉。

「モ、モニカ?」

「私のことをそう思ってくださったことが、嬉しいです」

「モニカ? すまないが、顔をあげて欲しい。君の顔を見たい」

「無理です」

「どうして?」

「嬉しいから」
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