俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 嬉しすぎて、モニカの目からは涙が溢れていた。可愛いと言ってもらえたことが嬉しい。
 女じゃない、可愛くない。幼い頃からそういう否定的な言葉ばかりをかけられていたモニカにとって、可愛いと言ってもらえたことは素直に嬉しい。

「嬉しい、というのは、その。まあ、え、と。あの」
 カリッドは何か言いたいのだが、それがうまくまとまらない。だけど、一つだけ伝えるべきことがあると思っていた。

「モニカ。俺は、君のことが好きだ。どうか、俺の恋人になってほしい」

「え?」
 涙に濡れた顔で、思わずカリッドを見上げてしまった。
「団長って、私のこと、好きなんですか?」

「好きでなかったら、あのような口づけはできない」

< 115 / 177 >

この作品をシェア

pagetop