俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 やるべきことを終えて宿に戻った二人。カリッドとしてはモニカにあんなことやこんなことをしたいと思っていたはずなのに、こうやって『恋人』という関係になると、余裕ができたからなのか、落ち着いているのが不思議だった。
 二人で明日の流れを確認し、そして宿でゆっくりと夕食をとる。
 闇は深まり、その深まる闇を照らすかのような少し欠けた月がゆるりと昇ってくる頃。カリッドはまたイアンの部屋にいた。

「おめでとうございます、カリッド様」

「あ、ああ。俺、とうとうモニカに告白したんだ。よくやったと、自分で自分を褒めたい」

「ええ。私もカリッド様を褒めてあげたいです。恋人役とかそんなことを言わずに、最初から恋人になって欲しいと言えばよかったのにと思ってはいますが。ここでやっと告白できたカリッド様は、偉いです」
 いい子いい子と、子供をなだめるような口調でイアンに言われてしまったが、そんなことで腹を立てるような心の狭いカリッドではない。

< 120 / 177 >

この作品をシェア

pagetop