俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「その、俺たちは恋人同士になったわけだから。遠慮せずに君の気持ちを伝えて欲しいのだが」

「あ、はい。その。あの、劇場でリディがおっしゃっていたことです」

「俺が言ったこと?」
 はて、なんだろう、とカリッドは劇場での自分の行動を思い出す。だが、舞い上がってしまっていたからか、その告白の前後の記憶がすっぱりと抜け落ちている。

「す、すまない。その、舞い上がり過ぎて忘れてしまった」

 いつも団長としてびしっと団員をまとめているカリッドなのに、舞い上がってそうやって忘れてしまうこともあるんだな、と思ったモニカは、そのカリッドが可愛らしく見えてくるから不思議だった。いわゆる、ギャップ萌えと呼ばれるような心理状態に陥っていることに、モニカ自身も気付くわけも無く。それでも、彼を翻弄させてやりたいという小悪魔的な欲望も無いわけでも無く。

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