俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「え、と。劇場での続きは、宿に戻ってからだって」

 劇場での続き、とは何だろうとカリッドは記憶を掘り起こす。告白の前に何をしたか。じっくりと記憶を掘り起こして、背筋に嫌な汗が流れた。そうだ、勢いにのってベロカラ的な濃厚な口づけをしてしまった。
 つまり、それの続きということは。

「モ、モニカ。その、あの口づけの続きをしても、いいのか?」

 カリッドは思わずそう尋ねていた。すると、彼女はゆっくりと首を縦に振ると、ガウンの襟元になぜか手をかける。そうやって、肩からするりとそれを滑り落とすと。

「……っ」

 カリッドは思わず息を飲んだ。

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