俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「だ、だが。その、そういった教育は受けている。だ、だから。そ、その。痛くはしない……」
 また、モニカの体中の血液が沸騰したような感覚に襲われた。ぶわっと、背筋に何かが通り抜けるような。

「え、え? あ、そうなんですか?」
 モニカはどう答えたらいいかがわからなかった。彼のような女性受けが良さそうな見目整っている男性が、まだ女性経験が無いというその事実に、驚きを隠せない。休みのたびに、女性を抱いていそうなイメージだったのに。

「どうした? モニカ」

「いえ、その。正直な気持ちを申し上げますと。その、遊んでるんだろうな、と思ってました」

「なっ……。違う、断じて違う。俺は、遊びで女性は抱けない。むしろ、ずっと女性は抱けないと思っていた」

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