俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「それで、その見合いが嫌であるため、モニカ殿にあなた様の恋人役を頼んだわけですか」
 お茶をコトリと執務用の机の上に置きながら、あきれた声でそう言ったのが事務官であるイアン。彼はカリッドの事務官でありながら、カリッドが屋敷から連れてきた優秀な使用人でもある。

「でなければ、見合いだ」
 はあ、とカリッドは大きく肩で息をついた。

「見合い、すればよろしいではないのですか?」
 この優秀な使用人もモニカと同じようなことを口にする。

「俺はまだ結婚したくない」
 机の上で両手を組み、カリッドはそこに顔を埋めた。

「それは、厳密には好きではない女性とは結婚したくない、ということですよね? 相手があなた様の思い人であれば結婚したいのではないですか?」

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