俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 さて、ドーランの言う実技とはどのようなことを行うのか。純真無垢なカリッドはどのような授業が始まるのか、どのような新しい知識を得ることができるのかと思って、心を躍らせていた。
 だが、その期待が裏切られたのはその二十分後。カリッドの叫び声が聞こえたからだ。その声を聞いた護衛の騎士達が何事かとカリッドの元へと向かう。そして目に映った光景に、誰もが目を疑うと同時に、カリッドの身柄を無事に保護した。

「カリッド様、落ち着かれましたか?」

 護衛の男が、ソファの隅っこに毛布をかぶって丸くなって座っているカリッドの前に温かいお茶を差し出した。この男、年は三十後半。だから、先ほどの光景を目にしたとしても意外と落ち着いていることができた。
 先程の光景、それは俯せに倒されたカリッドの上にあのドーランという女性が跨っていた光景である。目を疑いたくなったのはその二人の下半身なのだが、そこはあえて触れるのはよそうと思っていた。

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