俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 そのときの彼女の様子は絶対に忘れることはできない。
「それは。新しいパワハラでしょうか?」
 と尋ねながらも、少し頬を染めていた彼女のことを。恐らく本人は気付いていないだろう。いつも彼女を見つめていたカリッドだから気付くことができた。

 恐らく。
 全ては運命だったのだ。カリッドがモニカに導かれるように彼女と出会い、彼女と結婚をして、子を授かることが。
 神が仕掛けた罠だったのだ、とカリッドは思っている。そしてこの罠に見事はまったカリッドは今、幸せであるとも思っていた。

「また、動いたな。こんなに元気であれば、男の子か?」

「わからないわよ。私みたいな女の子かもしれないし」

< 169 / 177 >

この作品をシェア

pagetop