俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 イアンが受付で何か言葉を交わし、そしてまたモニカはイアンの案内によって部屋へと移動する。
 その部屋も最上階で、見るからにお高そうな部屋である。

 イアンが豪勢な扉をノックすると、中から耳に馴染んだ声が聞こえてきた。

「失礼します」
 イアンに促され、部屋へと入ったモニカだが、やはりこの部屋もお高そうである、ということだけはわかった。

「モニカ、遅いから心配したじゃないか」
 モニカの顔を見るなり、カリッドが激しい顔つきで言ってきた。

「あ、はい。すいません」
 こういうときのカリッドには素直に謝るに限る。それは、この一年、彼の部下として仕えたことによる経験から。

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