俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
(奥様じゃないんだけど)
 というモニカの心の声は誰にも届かない。そしていつの間にか下着だけの姿にされ、あれよあれよとドレスを着せられてしまう。

「お直しの必要はありませんね」
 と、鏡に映るモニカの肩越しに顔を出してきた店員が満足そうに頷いている。それもこれも、カリッドが職権乱用のセクハラをしたせいだ。

「カリッド様、いかがでしょう?」

 いつの間にか、カリッドがその場にいたらしい。まさか着替えているところを見られてはいないよな、とモニカは焦る。カリッドが店員の言葉に対して何も答えないところが恐ろしいのだが。

「だ……じゃなくて、リディ。どうでしょう? 変ではありませんか?」 

 あまりにも無言すぎるカリッドが怖すぎて、モニカも恐る恐る声をかけてみた。カリッドは腕を組んで、じっとモニカを見据えている。

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