俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 カリッドと共にする食事は、そのマナーを監視されているようで、美味しい料理も緊張で味がわからなくなっていた。だが、カリッドはそのマナーについては何も言わない。
 合間に少し、他愛もない会話をし、食事を味わう、という程度。

 食事を終えると、カリッドは満足そうに頷き「合格だ」と言う。
「君は、そういったマナーを受けてきたのか? ただの平民とは思えないな」

「あ、えと」
 モニカは本当のことを言おうかどうか迷っていた。この騎士団に入団したときは、平民枠で入団している。それは父親の意向によるもの。

「まあ、団長もご存知の通り、私はリヴァージュの民ですから。リヴァージュはそういうことには五月蠅いのですよ」
 というよりは、彼女の父親が、だ。

「そうか。やはり君に恋人役を頼んだ俺の目に、狂いはなかったようだな」
 カリッドは微笑する。
「だが、俺のことを団長と呼んだことは、カウントするからな。六回目だ」

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