俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「モニカ、大丈夫か?」
 あまりにも金魚になりすぎているモニカが心配になり、カリッドは声をかけた。
 するとモニカもエラ呼吸から肺呼吸に切替たかのように、口を閉じてゆっくりと頷く。

「それは。新しいパワハラでしょうか?」
 思わずモニカはそう尋ねていた。
 パワハラ。パワーハラスメントと呼ばれる言葉が飛び交うようになってきたのはここ数年の話。異世界からやってきた迷い人が言い出したという説が有力なのだが、職場内の優位性を背景に、部下などに精神的・身体的に苦痛を与えて人格と尊厳を侵害すること、とされている。

「いや、断じて違う」
 だが言い訳をすればするほどドツボにはまりそうであるため、仕方なく一通の書面を手渡した。
「これは、なんでしょう?」
 受け取りながら、モニカは尋ねた。

「いいから、読んでくれ」

< 5 / 177 >

この作品をシェア

pagetop