俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「先っちょでもダメか?」

「なんなんですか、その先っちょっていうのは」
 またイアンの眼鏡がずれそうになった。

「モニカに触れるだけで、俺の下半身が大変なことになるのだが」

「我慢なさってください」

 イアンにそう言われ、しゅんと肩を縮めるカリッドだが、彼は肝心なことを忘れていた。

「あ。モニカと寝る前に口づけをすることを約束してしまった……。あわよくば、と考えていたんだった」
 今度は両手で頭を抱え込むカリッド。

「あわよくばはあわよくばで、それはそれで構わないのですが。とにかく、暴走なさらないようにお願いします。いいですか、くれぐれも無理やりはダメですよ。いくら先っちょだけでも、無理やりはダメです」

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