俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 カリッドはモニカの言っている意味をすぐさまに理解することができなかった。だが、今の口づけは、彼女が「カリッドのことを団長と呼んでしまったことに対するペナルティ」と思っている、ということを理解した。

「モニカ。いつも言っているだろう。どんな状況においても冷静にものごとを判断しろ、と。俺がお茶をこぼしたくらいで、俺のことを団長と呼んでしまったら、君が俺の偽物の恋人であると周囲に知られてしまう」

「え。もしかして、団長がお茶をこぼしたのって。わざとなんですか?」

「そうだ(いや、違う)」

「えー。ちょ、ちょっと酷いです。心配して損しました。もう、自分で拭いてくださいよ」
 モニカは手にしていたタオルをぽいっとカリッドに投げつけた。

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