俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

3.

 再びカリッドがヤツを静めてから部屋に戻ると、モニカはソファに寄り掛かりながらうとうととしていた。不規則にその頭が揺れ、カクンと大きく揺れたかと思うと慌てて反対方向に揺れるそれが、壊れかけの玩具のようで面白い。

「モニカ」
 カリッドは優しく声をかけた。彼女と時間を共に過ごしたのはほんの数時間ではあるが、カリッドもヤツを制御する術というものを身につけ始めた。つまり、慣れてきたということだ。彼女に翻弄されるのは、何も今に始まったことでは無いではないか、と自分に言い聞かせ、今までの過去のことを思い出すと、冷静になれたものだった。

「モニカ」

 もう一度声をかけると、彼女の頭が激しく動いた。そしてその名を呼んだ主を探すかのように大きく首をまわす。

「あ、だんちょー。あがったんですね」

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