俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 カリッドのいうところの、ふんわふんわが彼の目の前にあった。むしろ、それに顔を押し付けられている。しかも、いい匂い。
 彼女がくるまっていた毛布が、カリッドの肩にもかけられる。だが、彼の足は寝台の外にあるという中途半端な状態だ。
 これは、無理やりではないと理解したカリッドは、こうやって彼女と一緒に寝ることを心に決めた。中途半端に外に出ていた足も、寝台の上にあげ、彼女と並んで横になる。腕の置き場に困った。そっと、モニカの背に回してみる。

「ノーマン、甘えん坊さんね」

 彼女の手が優しくカリッドの頭を撫でる。

(こ、これは……。気持ちがいいかもしれない……)

 モニカの魅力にドキドキと興奮させられてばかりいたカリッドであるが、こうやって頭を撫でられるのは心地が良い。相手がモニカであっても、ヤツが落ち着いているから不思議だった。
 カリッドはモニカと同じ毛布に(くる)まり、次第に重くなる瞼に従った。

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