俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

　それに今、カリッドに団長を辞められてしまったら困る、というのも本音。第四騎士団は居心地がいい。団長は魔王だけど、女性騎士たちもカナンをはじめ、サバサバしていてあっけらかんとしていて、付き合いやすいのだ。
　だから、彼にはまだ団長を続けてもらって、この第四騎士団をもっと良くしてもらいたいという思いがあった。

　そんないろんな思いが混ざり合って引き受けてしまった恋人役。自分で本当によかったのか、という思いもあった。
　というのも、モニカには幼い頃に同じ部族の男からかけられた言葉にトラウマを持っていたのだ。
　リヴァージュの民の女性の肌は白い。男性の肌は黒い。女性は家で染物を行うのが一般的で、男性は外で狩りをするからだ。だがモニカは父親や兄について狩りにいくのが好きだった。だから、子供の頃はこんがりとその肌が焼けていた。

「女じゃねー」とか「かわいくねー」とか。
　そうやって同い年の男の子たちに言われ続け、家に帰っては母親の膝でよく泣いていた。それでも狩りが好きだったから、家では涙を見せるが、外ではけしてそれを見せないと心に決め、その狩りの腕をぐんぐんとあげた。