俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「あ、お茶。淹れましたけど、お飲みになりますか?」

「ああ、飲む」

(やっぱり、いつもの団長だ)とモニカは安心して、彼の前にお茶を置いた。

「あの、今日のご予定は? その、リディのご両親と会うのは明日、ですよね? 今日は何をするのでしょうか」
 隣に座ったカリッドに視線を向けて、モニカは尋ねた。カリッドは渡されたお茶をじっと見つめ、それを口元へと運んでいる。それが終わるのを、モニカはじっと待った。返事を焦らせて、またお茶をこぼされたりしたら、と考えると、面倒くさいだけ。

「ああ、美味いな。目が覚めた。朝から君のお茶を飲めるなんて幸せだ」

「は?」

「いや、なんでもない……」

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