俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

「もしかして、寝癖がついているのか？」

「寝癖？」

「先ほどから、君がじっと見ているから」

　モニカもしまった、と思った。カリッドのことが気になって、彼がお茶を飲む様子を見ていたからだ。だからって、それを口にできるわけもない。

「寝癖はこちらです」
　モニカは手を伸ばして、カリッドの後ろの髪を整えてあげる。と、いきなりその手を奪われ、顔を近づけられた。これは、口づけされる流れだ。モニカは心を決めて目を閉じた。

　カリッドは伸びてきた彼女の手を思わず掴んでしまった。どうやら、一晩同じ寝台で過ごしたことが、彼の気持ちを大きくしたらしい。それに、団長と呼んだ分の口づけはまだ何回も残っているはず。終わった後に、その件を口にすれば問題ないだろう。
　カリッドはモニカを抱き寄せて、深く口づけを交わす。