俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
「団長が変なことを言うから、つい」

「モニカ。また俺のことを団長と呼んだな。そんなに俺と口づけがしたいのか? ああいう濃厚なやつを」

「な、な、ち、違います。昨日から言ってるじゃないですか。慣れ、というものです。習慣です」

「だったら、早く俺を愛称で呼ぶことに慣れろ。それに口づけごときでいちいち動揺するな。俺の両親は鋭いからな。君が偽物の恋人であると見破られてしまう可能性だってある。くれぐれもそうならないように気を付けてくれ」

「万が一、ですが。もしそうなってしまった場合は?」

「まあ、報酬のマルセルの魔導弓はあきらめてくれ。俺も騎士団を退団することになるだろう。もしかしたら、君にも何らかの圧力が働くかもしれない」
 何らかの圧力、それはモニカが最も恐れていることでもある。自分の家族が巻き込まれたら、と。

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