俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 昨日もカリッドの前では笑いをこらえ、のっぺらぼうの仮面をつけていたイアンだが、彼がこの部屋を出ていってから五分後、寝台に転がって、バシバシとそれを叩きながら笑い転げていた。我が主ながら面白過ぎる、と。遅れてやってきた思春期をこじらせているようなヤツだな、と。

「なあ、イアン。今朝は、その、彼女と濃厚なチューをしたのだが。こう、ベロを絡ませるような、そう、あれだ。ベロカラ」

「なんですか、その朝からベロカラな流れは。どうなったらそうなるんです?」

「だから、そういう流れになったんだ」
 むしろ、カリッドがその流れを作った、が正解。カリッド、よくぞ頑張った、と褒めてもらいたい。

「まあ、そういう流れになってよかったですね」

「で、だ。ベロカラな仲なら、今日の夜は、先っちょくらいなら許されるよな」

「カリッド様。昨夜も申し上げましたが、合意のうえであれば許されます。ですが、無理やりはダメです」

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