狂った愛はどんな色？

人の温もりと優しさは、言わないと決めた心をあっという間に解してしまう。真希は気付けば夏希の腕の中で、叱られた後の小さな子どものように大泣きしていた。

「真希ちゃん、辛い思いをしてるんだね」

夏希に優しく頭を撫でられ、真希は夏希の自分より広い背中に腕を回す。そして、泣きながら全てを少しずつ話していく。

「そっか、それは辛かったね」

「あたし……もうこの家にいるのが怖い……」

か細い声で真希が言うと、夏希が「なら」と力強い笑みを浮かべる。それは、真希を安心させるには充分の笑顔だった。

「僕の家においでよ。こんな話を聞いて、僕も放っておけないし」

「……うん」

夏希がまるで映画のヒーローのように真希には見えた。そして、何度も何度も「ありがとう」と呟くのだった。



「じゃあ、ちょっと打ち合わせに行ってくるよ」

「行ってらっしゃい、気をつけてね」

まるで新婚のような会話をしながら、真希は玄関先で夏希を見送る。夏希の家で暮らすようになってから、出かける時は見送ることが自然と決まっていた。