狂った隣人たち

祐次の顔を真っ直ぐに見据えるその目には強い意志を感じる。


その目を見ているとごまかす気持ちがどんどんしぼんでいってしまう。


祐次はうつむきぬれた前髪を強く掴んだ。


頭皮が引っ張られて微かな痛みを感じる。


まだ俺は生きている。


まだ俺は正常だ。


そう感じることができた。


「どうして……っ」


冷静になろうと思っていたのに、言葉が途切れて涙が溢れてしまう。


熱い涙が頬を流れ、引き結んだ唇が震える。


「大丈夫だよ」


くるみは祐次の後頭部へ両手を回し、自分のほうへ引き寄せた。


祐次の抵抗しない。


くるみの温もりを感じ、祐次はもう涙を我慢することができなくなったのだった。