狂った隣人たち
☆☆☆

過去の事件が次から次へと父親の口から語られる。


その数は膨大で、とても記憶しきれないようなものだった。


実際にくるみが忘れてしまっているような印象に薄いが事件と呼べるものまで、父親は記憶していた。


祐次はなにも言わずにその話を聞いていた。


「そして、引っ越してくる家族はみんな同じ。両親と男兄弟の4人家族なんだ」


それを聞いたときだけ祐次はビクリと肩を震わせた。


「俺たちはなにも知らずに引っ越してきました。ただ、それほど有名ならすぐにでもわかったはずです」


「たぶんそうだろうね。今までの家族たちも同じだ。それなのに引っ越してくる。なにか、人には考えられないような力が働いているように思うけどね」


父親の言葉に祐次はうなづく。


「俺もそう思います」


正座をして膝の上で拳を握り締めていた祐次はジッとテーブルを睨みつけている。


自分たち家族ではなく、あの家が悪いのかもしれない。


そうわかったときどうするだろうか。


引っ越すのが一番だが、祐次も弘人も転校してきたばかりでそう簡単ではないことはわかっている。


「私が気になるのは、どうして祐次はまともなままなのかってこと」


くるみは重苦しい空気の中そう発言をした。


きっとみんなその疑問は感じていたはずだ。
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