狂った隣人たち
しかし祐次は図書館へ向かう前にどうしても自分の家に寄っておきたかった。


父親と母親は入院している。


弘人も父親の病院について行ったけれど、その後どうなったのか気になった。


家にいなければ病院に泊めてもらったはずだ。


玄関を開けてすぐに魚の生臭い匂いが鼻腔を刺激して立ち止まった。


後ろのくるみに「無理そうなら、入らなくて良いから」と声をかける。


しかしくるみはついてきた。


リビングのドアをあけると食べ散らかされた魚がそのまま残っていて、カーペットの血は乾いている。


「ひどい」


くるみが思わず呟く。


「あぁ、本当に」


祐次はそれしか返事ができなかった。


誰がどう見ても異常な状況だ。


「弘人、いないんだろ?」


声をかけながら念のために家の中をくまなく探す。


どこにも弘人の姿はなかったし、リビング意外に異質な状況になっている部屋もなかった。


ということはあの後誰もこの家に戻ってきていないということだ。


ひとまず安心した祐次は「図書館へ行こう」と、くるみを促したのだった。
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