狂った隣人たち
くるみの話を聞いているとどんどんと体が重たくなっていくようだった。


「でも待てよ? 大家ってことはあの家は元々建売だったのか?」


「ううん。今の大家さんはあの家を引き継いだんだよ。元々あの家が建てられたのは40年前。建てて、そこで暮らしていた人の名前は……」


くるみは画面へ視線を向ける。


江澤という文字だけが赤く浮かび上がるように書かれている。


「江澤……」


祐次が呟くと、背筋がゾクリを寒くなった。


まるで誰かに背中をなでられたような感触がして振り返る。


しかし、そこには誰も立っていなかった。


「どうしてすぐに借り手が見つかるんだろうな。こんなに有名な家なのに」


「それは……」


そう言ったきりくるみは祐次を見つめた。


その視線でくるみが言おうとしていることがなんとなくつかめた。


祐次の家族だってそうだった。


人づてにあの家があると言われ、実際に見に行ったらすぐに気に入って、引越しまでの期間はそれほどかからなかった。


あの家にはそうやって人をひきつけるなにかがあるのだ。
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