狂った隣人たち
まるで、口を大きく開いて獲物が自ら飛び込んでくるのを待っているかのように。


「これを見てくれ」


祐次はゴクリと唾を飲み込んで持っていた新聞をくるみの前に広げた。


それは30年ほど昔の新聞だった。


「ここに、あの家で起こった事件について書かれている」


「うん」


確かに、あの家の白黒写真と、殺人事件が起こったという大きな見出しが書かれている。


「記事をよく読んで」


《○月×日。


江澤雄介さん宅で2人の遺体を発見。


身元は江沢雄介さん(39歳)


江澤亜里沙さん(35歳)


江澤孝司さん(15歳)と判明。


なお、長男の行方がわかっておらず、事件に関与しているとの疑いが……》


その記事にくるみは大きく目を見開いた。


江澤!


さっき見た名前だ。


あの家を建てた一家に起こった事件に違いない。


「長男が行方不明って、その後見つかったのかな?」


くるみは疑問を口にしながらも素早く検索をかけた。


江澤一家についての生地もネット上に山のように溢れている。
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