狂った隣人たち
和室
この家が建って最初の事件を知ってからこうして眺めて見ると、家自体が異様な空気に包まれている気がした。


くるみと祐次は互いに肌寒さを感じながらも玄関を開けて、一歩中に踏み入れる。


途端に生臭い匂いが鼻を刺激して同時に顔をしかめていた。


さっき魚を片付ける暇がなかったからそのせいかと思った。


だけど違う。


魚の生臭さも漂ってくるけれど、それよりも強烈は腐敗臭がする。


「くるみはここで待っていて」


祐次はそう言い残してひとりでリビングへと入っていってしまった。


祐次の姿が見えなくなり、途端に不安が募っていく。


玄関を見回して見てもなんの変哲もないし、廊下にも異変は感じられない。


それなのに体中に重たい空気がのしかかってきているようだった。


きっと、あんな記事を読んでしまったからだ。


この家にはいまだに3人の怨霊がとどまっている。


その思い込みがこんな気持ちにさせているのだ。


くるみは必死で自分にそう言い聞かせて深呼吸を繰り返した。


そうしないと呼吸が止まってしまうような不安感があった。


一旦玄関から出よう。


そう思って体を反転させたときだった。


目の端に白い服を着た男性が見えた気がして振り向いた。


しかしそこには廊下が広がっているばかりで誰もいない。
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