狂った隣人たち
それから視線を離し、2人は和室の前に立った。


微かにだけれど異臭がきつくなった気がしてくるみは手で鼻を覆った。


「埃っぽいから少し離れてて」


祐次はそう言うとうっすらと埃の積もったダンボール箱リビングへと移動し始めた。


くるみも軽いダンボールを移動するのを手伝うと、すぐに和室へ通じる襖が現れた。


ついさっき白い服の男はこの中に入っていった。


この部屋に一体なにがあるんだろう。


くるみは緊張してゴクリと唾を飲み込む。


祐次は襖の前にたち、一気にそれを開けた。


かすかな音を立てて襖は横へスライドされる。


現れたのは6畳のなんの変哲もない和室だった。


荷物も家具もなにも運び入れられておらず、祐次たちが引っ越してきたときのままの状態だということがわかった。


しかし、一歩和室に足を踏み入れてみると途端に空気が冷たくなり、吐く息が白くなる。


くるみは自分の体を抱きしめるようにして奥へと進んだ。


和室を入った正面は窓になっていて、今は雨戸が閉じられている。


左手には板張りの空間があり、そこに花瓶や掛け軸などを飾っておくことができるようだ。


それ以外にはなにもない、ガランとした部屋だ。
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