狂った隣人たち
「母親はここを客室として使う予定だったんだ」


祐次は説明しながら押入れを開いた。


中は空っぽだ。


少しかび臭い匂いがしている。


くるみもそれにならって部屋の中を確認してみたけれど、なにも見つからない。


それなのに長時間この部屋にいると気分が悪くなってきそうだった。


「ねぇ、もしかしてこの部屋って……」


ここに入っていたときから感じていたことを口にして、少しためらう。


「なに?」


「死体があった部屋、とかじゃないよね?」


最初に足を踏み入れたときに感じた寒気。


そして長時間いると気分が悪くなりそうな、重苦しい雰囲気。


当時ここが殺害現場となっていたとすれば、それもうなづけることだった。


「そうなのかもしれないな」


祐次は青ざめた顔でうなづく。


気分が悪くなってきたのかこころなしか足がふらついている。


「一旦外へ出ようよ」


「あぁ」


そして2人が出入り口へと向かった瞬間だった。


開け放してあった襖が突然パンッ! と音を立てて勢い良く閉まったのだ。


目の前で閉じられた襖に祐次が息を飲む。


くるみは小さな悲鳴を上げて祐次の腕を掴んだ。
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