狂った隣人たち
被害者としてネットや新聞でも写真を確認していたが、目の前にいる人物が同一だとは思えないほどに変貌していた。


途端に悲しい気持ちがこみ上げてくる。


どんな気持ちで殺されたんだろうか。


どんな気持ちで床下に閉じ込められていたんだろうか。


発達障害のある長男を止めることはできなかったんだろうか……。


「違う」


不意に祐次が呟いた。


「え?」


「この人、江澤さんじゃない」


くるみは唖然として祐次の背中を見つめた。


祐次は一体なにを言っているんだろう?


どう考えてもここで殺された人に決まっている。


くるみは腐りかけた肉体を持つ男性へ視線を向けた。


こんな状態じゃ年齢も性別もわからないけれど、でも……。


その時、男が手の平からなにかを落とした。


パサッとかすかな音を立ててそれが畳の上に落下する。


なに?


土で黒く汚れているそれに目をこらす。
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