狂った隣人たち
☆☆☆

和宏の中にはやりきった気持ちが大きく広がっていく。


目の前には血の流して倒れている男児。


男児は目を見開いて動かなくなっているけれど、漫画はすぐ近くにあった。


その漫画を手にしてたちがる。


これもちゃんと盗んだことになるはずだ。


優越感すら感じて帰宅すると、孝司はすでに家にいた。


いつの間にか随分と長い時間が経過していたのだと気がついてびっくりした。


「なんだよ、やればできるじゃん」


孝司はそう言うと、当然のように和宏の手から漫画を奪って読み始めたのだった。


和宏にとってはこれですべてうまく行ったように感じていた。


和宏が生きていく上での一番の脅威は孝司なのだから、その孝司が満足している間は平和に暮らすことができる。


だけど、どうやらそうじゃないらしい。


それは夕飯も食べてお風呂も終わらせた夜の時間に突然やってきた。


チャイムが鳴って玄関に向かった母親が、すぐに険しい表情で父親を呼んだのだ。
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