狂った隣人たち
☆☆☆

翌日の昼間、和宏は自宅に戻ってきていた。


説明することが不十分だったり障害の影響を考えてのことだった。


だけどこれから何度も説明を聞くことになるし、もしかしたら家に戻れないときもあるかもしれないと言われていた。


それでも和宏にはことの重大さを理解しかねていた。


だって和宏が小学生にしたことは、毎日のように孝司からうけいたことだからだ。


自分が逮捕されるなら、どうして孝司が逮捕されないのかわからなかった。


リビングに入ると父親が生気を失った表情でソファに座っていた。


和宏を警察署まで迎えに来てくれた母親が、無言でソファに座るように促してくる。


和宏は素直に父親の隣に座った。


母親は和宏を間に挟むように座ると、和宏の体を抱きしめた。


いつも孝司がしてもらっていることだ。


和宏は少し驚いたけれど嬉しさがこみ上げて生きた。


母親の体はとても温かくて、料理の臭いがして、そしてやわらかかった。


心地よくてうっとりと目を閉じたとき、腹部にドンッと衝撃があった。


なんだろうと思ってみてみるとわき腹から黒い棒が突き出していた。


それはいつも母親が使っている包丁の柄の部分だった。


父親が突き刺したのだ。
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