狂った隣人たち
☆☆☆

床下は暗く、湿っぽくて臭くて、だけどそんなことも気にならない状態になっていた。


スマホのライトで周囲を照らしながら前進を続ける。


警察に連絡すると言っていた祐次だけれど、今はもう、先にやるべきことがわかっていた。


「どの辺かわかる?」


「一応、音がしてきた方に向かってるんだけどな」


返答する祐次は自信がなさそうだ。


普通暗闇の中にいるとだんだん目が慣れてきて薄っすらと周囲を確認することができるけれど、床下は漆黒の闇だった。


スマホのライトがなければ前に進むこともできなかったかもしれない。


「こんなに暗いなんて辺だよね」


くるみは寒気に身震いを繰り返して言う。


床下には湿気で家が崩れてしまわないよう、換気口があるはずだ。


そこからの明かりすら見つけられない。


不安が押し寄せてきそうになったその瞬間だった。


なにかがくるみの足を掴んでいた。


「キャア!!」


悲鳴を上げてそれを振りほどく。


「どうした!?」


祐次がスマホのライトで照らし出すとくるみの足元に小さなくぼみがあるのがわかった。


2人は同時に息を飲む。


くるみの足には誰かの手に掴まれた痕がくっきりと残っていたのだった。
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