狂った隣人たち
この気持ちさえあれば、あるいは今回のことも乗り越えていくことができるのかもしれない。


ぼんやりと隣の家の様子を見ていた聡子が何かに気がついたように「ねぇ、あれ」と、指差した。


「なに?」


「ほら、祐次くんの後ろ!!」


途端に聡子の声が大きくなった。


祐次の後ろへ視点をあわせるより先に、隣の窓に血しぶきが散っていた。


祐次がこちらに体を向けたまま、大きく目を見開く。


そして窓に両手をつき、ずるずると倒れこむ。


え?


一瞬、なにが起こったのかわからなかった。


祐次が倒れた向こうには赤い血で汚れた包丁を握り締める、祐次の父親が立っていた。


祐次の首筋かららドクドクと絶え間なく血が流れ出す。


刺されたんだ!


理解すると同時にくるみはリビングの窓を開けて外へ飛び出していた。


「くるみ!!」


叫び声を上げて聡子が追いかけてくる。


素足のまま走って隣の家へ玄関から駆け上がった。
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